バイオ株が悲惨なコトになっています。
下はバイオテクノロジー株の株価指数、BTKです。

下落の原因は「バイオ坊や」ことターリング・ファーマシューティカルズのマーティン・シクレリというCEOがテレビ出演し、最近、同社が行った値上げを正当だと主張したことに端を発します。
マーティン・シクレリは、見ての通り、未だ若い経営者ですが、幼少の頃から株式投資にめざめ、高校生のとき、ジム・クレーマーのヘッジファンド、クレーマー・バーコウィッツでインターンをしたこともあります。
ジム・クレーマーは「おれはこんな奴、インターンに採用した覚えはない!」と関係を否定しています。
(僕の考えでは、クレーマー・バーコウィッツは15人も入れば窮屈で身動きも取れないような小さなオフィスに入っていたので、インターンが一人増えれば、当然、ジムは気が付いていたはずです)
その後、マーティンは自分のヘッジファンドを始めますが、最近、閃くものがあって(ちょっとまてよ、ヘッジファンドやるより、パテント切れになった昔からある薬を安値で買い受け、それを値上げした方が儲かるぞ)ということに気が付きます。
それでヘッジファンドを廃業し、薬品会社を旗揚げし、ダラプリムという寄生性原虫感染症の薬を買い取りました。ダラプリムは売出されて60年以上経っている古い薬で、当然、パテントは切れています。一錠1630円で販売されていました。マーティンはその薬を買収した後、値段を一錠9万円に吊り上げます。
ダラプリムはHIV/AIDSの患者などが服用するのですが、この値上げにより突然、多くの患者がダラプリムを買えなくなってしまいました。
この手の値上げは、アメリカでは過去にも事例があり、別に珍しくありません。まずかったのは、マーティン・シクレリがテレビに出演し、「わが社が行った値上げは、正当である」ということを堂々と主張した点にあります。
彼は、「ダラプリムは60年も前からある薬だけれど、それを販売することによって製薬会社が儲ける事が出来ないので、誰も改良しようとしない。もし適正な薬価まで値上げ出来れば、R&Dをして更に改良した薬が出せる」と主張したのです。
問題は、彼は元ヘッジファンド・マネージャーであり、創薬のバックグラウンドは無い点にあります。つまり彼がいくら「儲けたら、そのお金で患者の役に立つ新薬を創薬する」と主張しても、誰からも信用されない点にあります。
彼はテレビでボコボコに凹まされ、次期大統領選挙活動に入っているヒラリー・クリントンは「薬価の問題に取り組む」とツイートしました。
バイオ業界にしてみれば、とんだ藪蛇(やぶへび)になってしまったのです。
このニュースを受けてバイオ業界の団体であるBIO(Biotechnology Innovation Organization)はターリング・ファーマシューティカルズを追放しました。
ターリングは轟々たる非難の中でダラプリムの値段を下げると発表しました。しかしFBIは「犯罪があったのではないか?」ということでターリング・ファーマシューティカルズの調査に乗り出しています。
このようなニュースに接すると、脊髄反射として「薬価が高いのは、良くない!」と反応してしまいがちですが、実際には新薬を開発するには莫大な研究開発費が必要であり、薬価がすべて統制価格になると、イノベーションの勢いが殺がれます。それは新薬の殆どが、自由に薬価を設定できるアメリカで生まれていることを考えれば自明のことです。
しかし企業が市場原理に基づいて薬価を自由に設定できるそもそもの理由は、それを患者やペイヤー(保険会社など)をリーズナブルと感じ、しかも治療薬が開発されることで病気が治るという恩恵を受けることが出来るからです。
60年前に開発され、既にずっと市場に出回っていた薬の薬価が割安に放置されてきたのは、市場原理でそうなっていたのであって、その薬を買収し、薬価を吊り上げるのは「買占め」に他なりません。
もちろん、他にも同様のことをやっている企業は沢山あります。でも他の企業の経営者は、ひっそりと儲けており、胸を叩いて自分がぼろ儲けしている事実を吹聴して回るようなバカな真似はしません。
マーティンの場合、そのへんの判断が絶望的に未熟だったわけです。
下はバイオテクノロジー株の株価指数、BTKです。

下落の原因は「バイオ坊や」ことターリング・ファーマシューティカルズのマーティン・シクレリというCEOがテレビ出演し、最近、同社が行った値上げを正当だと主張したことに端を発します。
マーティン・シクレリは、見ての通り、未だ若い経営者ですが、幼少の頃から株式投資にめざめ、高校生のとき、ジム・クレーマーのヘッジファンド、クレーマー・バーコウィッツでインターンをしたこともあります。
ジム・クレーマーは「おれはこんな奴、インターンに採用した覚えはない!」と関係を否定しています。
(僕の考えでは、クレーマー・バーコウィッツは15人も入れば窮屈で身動きも取れないような小さなオフィスに入っていたので、インターンが一人増えれば、当然、ジムは気が付いていたはずです)
その後、マーティンは自分のヘッジファンドを始めますが、最近、閃くものがあって(ちょっとまてよ、ヘッジファンドやるより、パテント切れになった昔からある薬を安値で買い受け、それを値上げした方が儲かるぞ)ということに気が付きます。
それでヘッジファンドを廃業し、薬品会社を旗揚げし、ダラプリムという寄生性原虫感染症の薬を買い取りました。ダラプリムは売出されて60年以上経っている古い薬で、当然、パテントは切れています。一錠1630円で販売されていました。マーティンはその薬を買収した後、値段を一錠9万円に吊り上げます。
ダラプリムはHIV/AIDSの患者などが服用するのですが、この値上げにより突然、多くの患者がダラプリムを買えなくなってしまいました。
この手の値上げは、アメリカでは過去にも事例があり、別に珍しくありません。まずかったのは、マーティン・シクレリがテレビに出演し、「わが社が行った値上げは、正当である」ということを堂々と主張した点にあります。
彼は、「ダラプリムは60年も前からある薬だけれど、それを販売することによって製薬会社が儲ける事が出来ないので、誰も改良しようとしない。もし適正な薬価まで値上げ出来れば、R&Dをして更に改良した薬が出せる」と主張したのです。
問題は、彼は元ヘッジファンド・マネージャーであり、創薬のバックグラウンドは無い点にあります。つまり彼がいくら「儲けたら、そのお金で患者の役に立つ新薬を創薬する」と主張しても、誰からも信用されない点にあります。
彼はテレビでボコボコに凹まされ、次期大統領選挙活動に入っているヒラリー・クリントンは「薬価の問題に取り組む」とツイートしました。
バイオ業界にしてみれば、とんだ藪蛇(やぶへび)になってしまったのです。
このニュースを受けてバイオ業界の団体であるBIO(Biotechnology Innovation Organization)はターリング・ファーマシューティカルズを追放しました。
ターリングは轟々たる非難の中でダラプリムの値段を下げると発表しました。しかしFBIは「犯罪があったのではないか?」ということでターリング・ファーマシューティカルズの調査に乗り出しています。
このようなニュースに接すると、脊髄反射として「薬価が高いのは、良くない!」と反応してしまいがちですが、実際には新薬を開発するには莫大な研究開発費が必要であり、薬価がすべて統制価格になると、イノベーションの勢いが殺がれます。それは新薬の殆どが、自由に薬価を設定できるアメリカで生まれていることを考えれば自明のことです。
しかし企業が市場原理に基づいて薬価を自由に設定できるそもそもの理由は、それを患者やペイヤー(保険会社など)をリーズナブルと感じ、しかも治療薬が開発されることで病気が治るという恩恵を受けることが出来るからです。
60年前に開発され、既にずっと市場に出回っていた薬の薬価が割安に放置されてきたのは、市場原理でそうなっていたのであって、その薬を買収し、薬価を吊り上げるのは「買占め」に他なりません。
もちろん、他にも同様のことをやっている企業は沢山あります。でも他の企業の経営者は、ひっそりと儲けており、胸を叩いて自分がぼろ儲けしている事実を吹聴して回るようなバカな真似はしません。
マーティンの場合、そのへんの判断が絶望的に未熟だったわけです。