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今日、トルコ軍がクーデターを企てた模様です。トルコ軍はイスタンブールの主要な橋を閉鎖したほか、首都アンカラでは銃声が聞こえ首都上空をトルコ軍の戦闘機が飛んでいます。
続報があれば、下に追記します。


(最新のアップデートを読むには、ときどきこのページをリフレッシュしてください)


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【日本時間6:31AM】トルコ・リラは急落中です。

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【東京時間6:34AM】
トルコの政府系テレビでは「軍がクーデターでトルコを支配下に収めた。この放送は軍から命令されて読み上げている」と報じました。

【東京時間 6:41AM】
エルドアン大統領はトルコのテレビ番組でFaceTimeを通じてインタビューされ、軍の最高司令官が拘束され、将校が勝手にクーデターを企てていることについて「そういう話は聞いている」と答えました。下がその様子。

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【Market Hackの解説】
一体、なぜクーデターがおきているの?

たぶんみんな混乱していると思うので、Market Hackなりに背景の解説を試みます。

まずトルコはオスマン帝国が崩壊した際、ケマル・パシャが登場しました。彼は建国の父と言われる存在です。

ケマルは英軍、ギリシャ軍、イタリア軍、フランス軍、アルメニア軍に囲まれながら、徒手空拳でこれらと戦いました。そしてそれらを各個撃破しました。

ケマルはスルタン制が崩れた後も列強からの干渉を退け、1923年に共和国宣言が出されます。そしてケマルが初代大統領になります。

ケマルは世俗主義(=イスラム教に依らない政治)を主張し、イスラム歴→太陽暦、トルコ帽→禁止、アラビア文字→ケマル自身が新たに考案した新文字を使用……といった一連の改革で、トルコの人たちを「自分たちはムスリムだ」という認識から「自分たちはトルコ国民だ」という意識の改革に成功しました。

つまりケマル主義とは、進歩的で、宗教に依らない新しい思潮を指すのです。

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(青年トルコ党)

しかしこのような世俗派(=それをケマル派と呼ぶ場合もあります)に対し、トルコでは折に触れて昔ながらのイスラム教の教義に基づいた国政運営をして欲しいという勢力が盛り返すということが繰り返されています。

乱暴な分類の仕方をすれば、世俗主義のケマル派は、政治的エリートから構成されており、中央で力を握っています。

これに対し地方ではイスラム的、保守的な勢力が根強く残っています。

この二つの勢力は1950年以降、ずっとシーソーゲームを続けており、政治の主導権はこの二つのグループの間を、行ったり来たりしています。

エルドアン大統領は「イスラムへの回帰」を目指しています。そして政府の中から世俗派を一掃してきました。

トルコにはアメリカ流の資本主義はありません。トルコ経済は政府系企業が経済の約半分を占めており、コネがなければ企業は生きてゆくことは出来ません。このためレント・シーキング的な兆候は経済のあらゆるところに見られ、汚職がはびこっています。

警察、メディア、司法なども腐敗の影響下に置かれています。そのような中で軍は世俗派の価値観を体現する「最後の良心」でありモダニズムの砦であると考える人も居ます。

トルコ軍の装備は近代的で、よく訓練されており、NATO軍の中では二番目の陣容を誇っています。またトルコの海軍は中東で最も強い海軍です。

ちょうどタイランドやエジプトの軍隊が庶民から尊敬されているように、トルコ軍も政治が乱れると国民から「クーデターを起こして欲しい」という待望論が出てくるわけです。

現在のトルコの政治ですが、これまでの世俗派対イスラム派という対立構造だけではなくそれにクルド人勢力やリベラル派など、沢山の新しい勢力が台頭し、たいへん複雑になってきています。

トルコは1921年にソ連と同盟を結んだこともあり、歴史的にロシアは友好国であると同時に脅威でもあります。現在、両国の関係はあまりよくありません。しかしトルコはエネルギーの供給をロシアに依存しているため、立場は弱いです。

【東京時間 7:22AM】
トルコ議会の建物の前でトルコ軍の戦車が砲撃。(ロイター)

【東京時間 7:29AM】
エルドアン大統領はバケーション中でした。現在の彼の居場所は明らかにされていません。

【東京時間 7:39AM】
地政学サイト「ストラトフォア」は「最近、軍の上層部はエルドアン政権のシリア戦略に反対の立場を取っていた」と説明しています。具体的にはエルドアン政権はシリア北部に地上軍を進軍する提案を出していました。トルコとロシアは、先のロシア戦闘機撃墜事件の後、最近になってようやく和解したばかりです。こんなときにシリア北部へ地上軍を進めたら、折角修復しかかったロシアとの関係にひびが入ることをトルコ軍の上層部は恐れているそうです。

【東京時間 8:05AM】
ストラトフォアによるとトルコのエルドアン大統領はドイツに亡命を求めているそうです。エルドアン大統領を乗せた飛行機はバケーション先のボトラムからイスタンブール空港に着陸したのですが、そこでイスタンブール入りを拒否され、まだ機内にいるそうです。これからドイツに向かって飛ぶ様子。

【東京時間 9:00AM】
クーデターに対する政府側の鎮圧作戦が功を奏し始めているという報道があります。

昨夜、トルコ軍の一部の反乱分子がクーデターを企てました。この反乱分子は比較的小さいグループですが、良く組織されているそうです。

これに対し、与党AKPを中心とするエルドアン政権は、国民に対し「クーデターを阻止しよう!」と呼びかけ、これに応えた市民が深夜のトルコの街に繰り出しています。この市民勢力はAKP側についている警察と組み、タクシム広場、アタチュルク国際空港などでデモ行進を始めています。

未確認情報としては、クーデターの首謀者が特定され、反乱軍は投降する気配があるとのことです。

このようにクーデター鎮圧の勢いは増していますが、未だ今後の展開がどうなるかは未知数です。

世論は真二つに割れています。

トルコ軍の司令官は「今回の一部将校によるクーデターを支持しない」と発表しています。

また反乱軍に対し「帰順せよ!」という命令を出しているそうです。


(何だか2・26事件みたいな展開になってきました)

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【東京時間 9:20AM】
トルコは過去に、1960年、1971年、1980年、1997年と4回の軍事クーデターを経験しています。従って、今回が5回目。

警察は、今のところエルドアン大統領の側に付いている模様です。クーデターを企てた反乱軍は、エルドアン大統領の権力のよりどころである警察を制圧することを狙いました。

しかしタクシム広場に治安警察が展開し、そこを占拠しようとした軍の排除にとりかかっていることからも、クーデター側がイスタンブールを制圧したという状況からは、ほど遠いことがわかります。

現在、エルドアン支持派の市民がタクシム広場に流れ込んでいます。

一方、首都アンカラではクーデターを企てた反乱軍が重要拠点を抑えていますが、TRTテレビ局はエルドアン支持派が奪回した模様です。

イスタンブールのアタチュルク国際空港に来ていた戦車は、帰順している模様。

トルコ空軍は反乱軍側についているようで、アンカラだけでなくイスタンブール上空でも攻撃ヘリコプターを飛ばし、トルコの諜報本部に空から射撃を加えた模様です。


【東京時間 9:55AM】
どうやら今回のクーデターはトルコ軍内のギュレニスト派(Gulenist)によって企てられた模様です。

ギュレニスト派はトルコの学者、フェトフッラー・ギュレンの考えを支持する人たちを指します。ギュレンは回教の道徳に基づく非暴力・穏健派の立場を取ります。

ところがエルドアン大統領はこのギュレニスト派の台頭を脅威に感じ、2014年にトルコ軍の中に存在するギュレニスト派の将校を大量に粛清しました。その際、軍の関係者の中にはこの粛清に対する深い反感とエルドアン大統領に対する憎悪の念が生まれたと言われます。

ギュレニスト派は、根こそぎ取り除かれたと思われてきたのですが、粛清された上官に対する忠誠心を持つ軍人も多く、彼らが今回、立ち上がったというのがストラトフォアの解釈です。

言い換えれば、今回のクーデターは、ケマル・アタチュルクの思想を継ぐ、世俗的なトルコ軍主流派の引き起こした事件ではなく、トルコ軍の中では傍系であるギュレニスト派が、エルドアン大統領に対する私怨を晴らすために企てたものである可能性があるわけです。

その意味するところは、トルコ軍の中にもギュレニスト派の考えとは意見が合わないメンバーは沢山存在するので、トルコ軍が真二つに割れる可能性があるということです。それはひいてはクーデターが失敗する確率が高くなることを意味します。