2026年の株式市場において、半導体製造の巨人インテル(NASDAQ:INTC)の熱気は凄まじい。年初来で168%もの急騰を見せており、経営陣による再建策と、依然として熱狂を帯びるAI需要への期待が投資家の買い意欲を強烈に掻き立てている。長年インテルのCEOであるリップブ・タン(Lip-Bu Tan)の手腕を評価してきたジム・クレイマーも、この再建劇の行方を注視する一人だ。ウォール街の反応も上々で、6月1日にはウェルズ・ファーゴが目標株価を85ドルから110ドルへと引き上げた(投資判断はイコールウェイト)。自律型AI(エージェンティックAI)の普及が同社のCPU需要の明確な追い風になると分析しており、スケールメリットの享受も視野に入っているという。みずほ証券も同様にエージェンティックAIの恩恵を指摘し、目標株価を124ドルから128ドルに引き上げている(投資判断は中立)。
クレイマー自身の見立ては少し独特だ。彼によれば、インテルはブロードコムではなく、台湾のTSMCの代替としての立ち位置にある。「ホック(・タン)は株を買うべきだ。これは2028年の勝負になる。ただ、私自身はかなり懐疑的だ。インテル・ファウンドリが2028年に間に合うのか? そう願いたいし、我々は信頼ベースでインテル株を保有している」。彼の言葉には期待と疑念が入り交じる。実際、インテルへの投資妙味は認めるものの、ダウンサイドリスクを抑えつつより大きなアップサイドを狙えるAI関連株は他にもあるという見方は根強い。トランプ政権期の関税政策や国内回帰(オンショアリング)のトレンドを考慮すれば、短期的な成長余地を残す極めて割安な別のAI銘柄に目を向けるのも一つの手だろう。
しかし、足元の株価上昇に浮かれてばかりもいられない。直近の1週間だけで株価は26%も跳ね上がったが、インサイダーの動きには不穏な気配が漂う。過去12ヶ月間、彼らは合計650万ドル相当の自社株を売り抜けているのだ。特に目立つのは、エイプリル・ミラー・ボイシ(April Miller Boise)による400万ドル規模の売却である。売却価格は1株あたり99.53ドル。現在の125ドルという株価よりも少し低い水準で手放している計算になる。インサイダーが現在値より安く売るということは、彼らがその低い価格帯を「適正」と見なしていた可能性を示唆しており、現在の高いバリュエーションを内部でどう評価しているのか、いささか疑問が残る。もちろん、売却の理由は人それぞれであり断定はできないが、彼女の持ち株の28%を一気に放出したという事実は無視できないシグナルだ。
過去1年を振り返ると、インサイダーによる買い付けは一切記録されておらず、売りが完全に先行している。直近の四半期だけでも650万ドルが市場に放出された。この状況を踏まえれば、経営陣全員が自社の株を「お買い得」だと信じていると主張するのは少々苦しい。とはいえ、インサイダーの動向が全てを決めるわけではない。インテル内部の人間は依然として約4億9800万ドル(発行済株式の0.08%)を保有している。これだけの規模の自社株を握っている以上、長期的な企業価値の向上という点において、一般株主と経営陣の利害はある程度一致していると見ていいはずだ。表面的な株価の熱狂と、内部の冷ややかな売却行動。このギャップにどう意味を見出すかは、2028年のファウンドリ計画の行方と同様、まだ市場の解釈に委ねられている。